2021年にプロバージョンとして登場したアストロクス88S。ヨネックスはやや弱かった低価格帯を強化する為に廉価版としてTour(日本未発売)およびゲームという品番を追加しました。個性的なラケットで賛否両論があるようですが個人的には面白いラケットだと思っている88Sプロをレビューしていきます。
公式スペック&テクノロジー
スペック上は前作と比べて特に大きな変化は無い。シャフトの太さやグリップの長さの変更もあったけど、最大の変化はフレーム周り。
新孔空け設計
スイートスポットでガットがある程度動くように設計しているのかな。グロメットの数も68ホールと大幅に削減されている。面圧を敢えて下げてる事も球持ち向上と関係しているんでしょう。因みに公式だと17%球持ち感が上昇しているとのこと。どう数字化してるか不明だけど半端無い数字。
ASTROX88では強度の高いVOLUME CUT RESINを使用することで、これまで採用出来なかった箇所に太径の孔の採用を可能に。ストリングの可動域が広がり、打球時の接触時間と球持ちを向上。SとDそれぞれの特性に合わせて最適な位置に最適な数の太径を配置することにより、前衛・後衛に合致した性能を発揮
実測スペック
88Sプロの実測値。スーパーストロンググリップ (AC133)にYonexアンダーラップを2周巻いてます。ガットはナノジー98を28ポンドで。
重量 | 93グラム(3U5), 89グラム(4U5) |
バランスポイント | 約310MM (3U5), 約309MM(4U5) |
シャフト経 | 6.7MM前後 |
フレーム厚 (12時) | 横10.9MM, 正面6.5MM |
フレーム厚(3時) | 横10.0MM, 正面6.7MM |
グリップ長 | 210MM |
バランス
3Uでヘッドの重い順に、Pro > Tour > Gameと言った感じ。ここはまぁ順当。プロは個体差があるみたいで、一部のCN版はヘッドがかなり重い個体がある様子。自分の3Uは旧88Sの3Uよりヘッドが重め。2本ともそんな感じ。
シャフト
エクストラスリムでヨネックスの中でも細目のシャフト。最近主流の6.6m。シャフトのおかげか打球感は前作より若干しなやか。グリップが前作より長くなった事も関係してそうだけど。
フレーム&ラケット面
フレームが厚くなったと公式では記載があったけどナノフレア700みたいな厚さではない。肉眼では旧88Sとほとんど変わらないかも。実際の計測でもフレーム再度の厚さは2mmも変わらなかったくらい。フレームの溝がジョイント付近まで入っていて見た目が良くなってる。
塗装
88Sプロを好きな一番の理由が塗装。100ZZを含めてアストロクスの塗装は全体的に好みじゃないけど、88Sプロは悪くない。デザインパターンも洗練されていて、アップグレード感が出ている。最近出たBP版の限定カラーは特にカッコいい。
実打レビュー
プロは4Uおよび3Uともに10ヶ月以上使ってきました。プロというだけあってかなり尖らせてきたラケットで、独特の打球感を体感出来る面白いラケットです。レビュー最後にTourおよびゲームの比較を紹介します。
パワー&トルク
スマッシュに関しては前作と比べて威力が上がってる感じはない。初速の速さや威力というよりも、根本的に打球感が違う。68ホール+グロメットの設計のせいか、前作のように打つと、タオルを叩いているような、少し力が抜けるような打球感。つまりはシャトルがガットに張り付いている時間が体感レベルで長い。
自分はそのおかげでシャトルに角度が付けやすいように錯覚したけど、シャトルが離れるタイミングにディレイがかかってただけだと後で気がついた。初めて使う人はいつもより1-2ポンドくらいテンションと上げると違和感は減ると思う。
ドライブのコントロールは付けやすい。特に強弱の変化は慣れると心地良い。モチっと食い込んでいい感じ。特にプッシュなんかはネットギリでも上手く押し込める。しつこいけどラグがあるから慣れが必要。
コントロール
クリアーやカットやドロップなんかの上から打つショットはそこまで目立った点はないかもしれない。球持ち感はアークセイバー11プロみたいな繊細な感じではなく、もう少し大味。思ってたより飛んでくなーみたいな時は今でも結構ある。
サーブレシーブ。このラケットの真骨頂の一つかもしれない。特にダブルスで速いスマッシュを受ける時なんかこのモチっと感の恩恵は大きい。シャトルがガットに食い込んでコントロールを付けやすい。
ハンドリング
前作と比べてハンドリング性能が大きく向上しているかと言うとそうでもない印象。シャフトが細い+グリップが長いから、取り回しが良いように感じるのかもしれない。グリップが長くなったのは素直に嬉しい。
管理人の一言
冒頭でも触れてるけど尖ったスペック故に賛否両論が多いラケット。自分の周りに限って言えば、88Sプロが最高って人に会った事がない。むしろ前作の方が良かったって人が大半。個人的な意見を言えば、ヨネックスは最大手なのに守りに入らず、こういう攻めたラケットを作っててヤルなと。
ラケット自体はアストロクスらしくソリッドで打ちごたえのある打球感。99ほど硬くないし嫌いな人が少ないマイルドな硬さ。今までの76ホールの打球感に慣れていた人がこのラケットを使うとデメリットの方が多いかもしれない。スマッシュも速くならないし、タイミングも掴みづらい。ドライブもなんか力が入らない感じがするし。それと68ホールの欠点としてガットの消耗が速い。
だけど、この球持ち感は唯一無二で他のラケットには見られない。ステータスを球持ちに極振りした感じ。前作と比べて他のステータスはあんまり変わらない気がするから、ポジティブに言えばスマッシュなんかをほとんど犠牲にせずに球持ち感が上がってるとも言えるかな。
ダブルスで高速ラリーが得意、速いラリーで空いた所に打っていくみたいな人にとってはアドバンテージがある。速いラリーの打ち合いにおいて、シャトルを瞬間的にホールドする時間を稼いでコントロールを付けられる。スタープラチナほどは時を止められないけど。あとはディフェンスメインで組み立てるダブルスプレイヤーにも悪くないかもしれない。
このラケットを使ってるとケビンがいつも頭をよぎる。ケビン専用88Sみたいな。ガットもエアロバイトブーストとコントロールに極振りしたセッティングで使ってるし。
3U or 4U?
4Uでもしっかり球持ち感が感じられるから、自分はダブルスで使う場合は4U使ってます。自分の3Uは2本ともかなりヘッド寄りだったのでお蔵入りです。この重さなら88Dプロで良いかなって。3Uで選べるならバランスウェイトがイーブン寄りの固体がダブルスでは使いやすいかなーと。
シングルスで使うならAX99プロもしくはAX77の方がいい気がする。見た目以外で敢えて88Sプロを使う理由がほとんど見当たらない。
正直なところ、このラケットに慣れるまで時間がかかるし、76ホールのラケットに戻した時に慣れるまでまた時間がかかるというデメリットが。その時間をトレードオフするだけの価値がどれくらいの人にあるのか不透明です。
Tourとの比較
スペック上はTourとプロはほぼ同じ。素材も同じ。違いはメイドイン台湾くらいかな。打球感は結構違う。3UのTourはプロよりバランスがイーブンよりで、シャフトも僅かに柔らかくて打球感がマイルド。モチっと感もプロほど強くない。個人的には3UのTourは誰でも使いやすい良ラケット言った印象。
ゲームとの比較
ゲームは完全に対象外だったけど、マスターいぶきさんのTwitterで購入を決定。塗装はプロと同じだけど、ゲームはTourと違って完全な廉価版。つまりは入門者向けのモデル。シャフトは約7.1mmと太めでプロ並みに硬い。初心者向けとは思えない硬さ。3Uのバランスはイーブンだからここは初心者向けと言えるけど。打球感はしっかり厚めでパワーがある人が打ってもラケット負けしない面白いスペック。やっぱり廉価版だけあって、打った後のブレ感は少し気になるところ。